鮮度の高い情報源から、活性化するコミュニケーション ブックラウンジ導入の狙いと展望

新たな国際ビジネス拠点となるべく、2020年9月に港区竹芝エリアにオープンした「東京ポートシティ竹芝」。この新型スマートビルには、ソフトバンク株式会社が有するさまざまな最先端テクノロジーが搭載され、利便性が大きく高まっているだけではなく、オフィスワーカーの快適性も大きく向上しています。竹芝エリアのスマートシティ化の象徴として、その存在はますます大きな注目を集めています。

このビルに本社を移転したソフトバンク株式会社は、フリーアドレスのワークスペースに新刊書籍を中心としたブックラウンジを設置されています。選書のご依頼を受けた青山ブックセンター・ブックコンサルティングサービスは、毎月20タイトルの書籍を選定し、納品させていただいています。

古今東西の名著を集めたライブラリーではなく、鮮度の高いブックラウンジを設置した狙いはどこにあったのでしょうか。そのコンセプトと今後の展望について、お話をうかがいました。

法人プロダクト&事業戦略本部法人事業管理統括部人材戦略部 人事総務課課長
石塚晶平様


「ベストミックスな働き方」への対応


―ブックラウンジ導入のお話をいただいたのは2021年12月でした。新型コロナウイルス感染症の蔓延もあり、社員の皆様の出社率が低下している中で交流の場を作るというご趣旨でご依頼をいただきました。

石塚様:
はい。もともと当社はハイブリットワークにより、柔軟な労働時間や働き方を体現することを目的として、テレワークを推進してきました。
リモート環境においても円滑なコミュニケーションや、スムーズな意思決定を行うためには、出社時の交流を増大させることが必要だと考え、その一環としてブックラウンジの設置を構想しました。出社と在宅、サテライト勤務などを組み合わせたさまざまな労働環境をベストミックスさせるためには、これまで以上にコミュニケーションの場の確保を意識する必要があると考えたのです。


―カフェも併設されたフリーアドレスのオフィスの一角にブックラウンジがあり、何気なく手に取りやすい環境ですね。また、想定されていたよりも貸し出しの要望が多かったとお聞きしました。

石塚様:
そうなんです。ブックラウンジの管理は私を含め3人の社員で行っているので、蔵書管理や返却の督促までをするのは難しいだろうと話し合っていたのですが、「せっかくこんなに良い本があるのだから、自宅で時間をかけてしっかりと読みたい」という要望が思いのほか多かったんです。仕事中にパラパラとめくってアイデアを得るとか、本について語り合うことで親近感を深めるというのがブックラウンジ設置の狙いだったのですが、勤務時間に本を読んでいると周囲の視線が気になるという声もありました。感染状況の緩和で出社率が回復していたこともありますが、「本を読んでいると働いているように見えない」というのは想定とはだいぶ違いました(笑)。


―働き方改革はまだ道半ばということでしょうか(笑)。そのような要望を受けて、貸し出しを開始されたのですね。

石塚様:
23年11月から始めて、ちょうどひと月くらい(取材当時)です。我が社で契約しているサービスを利用して、QRコードを読み取ることで蔵書と貸出の管理をしています。貸し出し期間が2週間を過ぎたら、返却要請のメールを自動で送信できるようになっています。



質と鮮度を兼ね備えた選書

―当初は同じ内容のラウンジを25階フロアと31階フロアの2ヶ所に設置し、初期納品で30タイトルずつ、その後は毎月10タイトルを2冊ずつとPOPを5点2セット納入させていただいておりましたが、2年目にしてブックラウンジを25階に統合され、毎月20タイトルとPOP10枚を納入する形になりました。その内容はビジネス書の新刊書籍や話題書を中心にというご要望で選書してまいりましたが、そもそもどのようなご構想だったのでしょうか?

石塚様:
選書サービスをされている数社から見積もりやプランをいただいたのですが、数百タイトルを一気に納品するといった、いわゆる図書館型のご提案がほとんどでした。私たちは古今東西の名著を揃えたライブラリーを作るというよりも、毎月新しいタイトルを買い足して鮮度を落とさないようにしたかったのですが、そのような小規模で頻繁な選書に対応してくださったのは、青山ブックセンターさんだけだったんです。


―おっしゃるように図書館というよりも、新刊書店がオフィスの一角にあるようなイメージですね。

石塚様:
いつも細かい要望に応えてくださるので、感謝しつつも申し訳なく思っています(笑)。設置当初はまだまだリモート率が高かったので、社員からの反応はあまりなかったのですが、出社率が上がるにしたがって、人材育成に関する話題書であるとか、SDGs関連書といった、ピンポイントの要望が寄せられるようになってきました。



―こちらの選書にはご満足いただけていますでしょうか?

石塚様:
とても満足しています。こちらからの要望はかなり具体的なものもあれば、ふわっとしたイメージのようなものもあるのですが、そのどちらにも想像以上の対応をしてくださっていると感じています。たとえば今はITのみならずどんなジャンルの企業でもAIの動向に強い関心を持っていると思いますが、「AIの本」という曖昧なリクエストにも、ChatGPT関連書のように絶対に押さえなければならない書籍はもちろん、少し先の動向を分析した本も入れてくださっていて、それがしかも社内の動向とマッチしているので驚かされることもしばしばです。


―ソフトバンク様に関するニュースは当然ですが、株主総会の内容なども拝読し、情報を元に推測しながら選んでおりましたので、まったく的外れな選書ではなかったとお聞きして少しホッとしております。

石塚様:
あとで選書された本について調べてみると、非常に重要視されていたり、評価の高い本だったりするので、おかげさまでとても有益なブックラウンジになっていると思っています。


コミュニケーション活性化のツールとして

―貸出状況も把握されているので、読んでくださる方が増えれば増えるほどその傾向がデータとして蓄積されていくものと思います。得られたデータを活用したコミュニケーション活性化などもお考えでしょうか?

石塚様:
我が社ではSlackを利用しているのですが、Slack内に「ブックラウンジチャンネル」を立ち上げました。これまではお送りいただいたPOPなどで一方向的に情報を発信してきたのですが、チャンネルに感想をアップしてもらったり、リアルタイムで話し合ってもらったりできればと考えています。選書のリクエストもより事細かにもらえるようになるのではないかと思います。


―リアルでもオンラインでも、本を片手に社員の皆様が語り合う場面が増えたとしたら、私たちとしても嬉しい限りです。

石塚様:
本当におっしゃる通りで、貸し出しそのものは大歓迎なのですが、できれば当初のイメージのように、社員同士が本について語り合ったり、仕事中に気軽に本を手に取ったりしてほしいと思っています。ブックラウンジのスペースはそれほど大きくないので、少し鮮度の落ちた本を社員にプレゼントしたり、チャリティーに使ったりして、適宜入れ替えもしていきたいと考えています。タイトルの入れ替えにも本の知識が必要だと思いますので、青山ブックセンターさんにご協力をお願いすることになるかと思います。


―今後もブックラウンジから生まれるコミュニケーションに寄与できるとすれば、本当に嬉しく思います。本日はお忙しいなかお時間をいただきありがとうございました。